強引上司とオタク女子

やがて、テーブルの上の生姜焼きから、湯気が立ち上らなくなる。
それを見ていたら、頬を滴が伝った。

私、泣いてる?
こんなことで?

おかしいよ、こんなの私じゃないみたい。

国島さんが来ない。
これだけのことが、どうしてこんなに悲しいの。


――ピンポーン


パニクった私の頭に、脳天チョップでも食らわされたみたいに呼び鈴が響く。
と、同時に電話も鳴った。

あわあわしつつ、電話の相手が国島さんだったので先に出つつ、玄関前にも向かう。


「も、もしもしっ」

『八重?』

「国島さん」

『ワリィ、遅くなって。お前帰ってからトラブル発生してさ。今部屋の前にいるから開け……』


ドアスコープから確認することもせず、チェーンを外して扉を開けた。
涙目の私を迎えるのは、目をまんまるに見開いた国島さん。


「……八重? どうした?」

「お、遅いですっ」


スマホをポケットにねじ込んで、国島さんが私の頬に触れる。


「なんで泣いてんだ」

「な、泣いてなんか……」

「いや、泣いてるだろ」


にじり寄られて、視界が彼の顔だけで埋まる。
近い、近すぎる!


我に返って涙を腕で拭い取って、彼の腕を振り払う。


「泣いてたのはあれだ。……そう玉ねぎです。しみたんですよ。つか、遅いじゃないですか。なんでも連絡してくれないと困るんですよ。せっかく作った料理だって冷めちゃって!」


そして一気にまくし立てる。

この勢いが途切れたらボロボロ泣いちゃいそうで嫌だ。
顔も見られたくないから背中を向けた。

< 81 / 87 >

この作品をシェア

pagetop