強引上司とオタク女子
やがて、テーブルの上の生姜焼きから、湯気が立ち上らなくなる。
それを見ていたら、頬を滴が伝った。
私、泣いてる?
こんなことで?
おかしいよ、こんなの私じゃないみたい。
国島さんが来ない。
これだけのことが、どうしてこんなに悲しいの。
――ピンポーン
パニクった私の頭に、脳天チョップでも食らわされたみたいに呼び鈴が響く。
と、同時に電話も鳴った。
あわあわしつつ、電話の相手が国島さんだったので先に出つつ、玄関前にも向かう。
「も、もしもしっ」
『八重?』
「国島さん」
『ワリィ、遅くなって。お前帰ってからトラブル発生してさ。今部屋の前にいるから開け……』
ドアスコープから確認することもせず、チェーンを外して扉を開けた。
涙目の私を迎えるのは、目をまんまるに見開いた国島さん。
「……八重? どうした?」
「お、遅いですっ」
スマホをポケットにねじ込んで、国島さんが私の頬に触れる。
「なんで泣いてんだ」
「な、泣いてなんか……」
「いや、泣いてるだろ」
にじり寄られて、視界が彼の顔だけで埋まる。
近い、近すぎる!
我に返って涙を腕で拭い取って、彼の腕を振り払う。
「泣いてたのはあれだ。……そう玉ねぎです。しみたんですよ。つか、遅いじゃないですか。なんでも連絡してくれないと困るんですよ。せっかく作った料理だって冷めちゃって!」
そして一気にまくし立てる。
この勢いが途切れたらボロボロ泣いちゃいそうで嫌だ。
顔も見られたくないから背中を向けた。