強引上司とオタク女子
「は? なんで今そんなこと……」
ぱっと離してくれたかと思ったら、顎を掴まれて唇を塞がれる。
頭が真っ白。
許可ってのは宣言だけじゃなくて、返事まで含んでこそなのですけど。
私がいつ「いい」って言ったよ!
……でも、安心はした。
事故にでもあってたらどうしようって本気で思ったもん。
だから、まあ、キスくらいいっか。
目を閉じて、彼のキスを受け入れる。
くすぐるように唇をなぞり、時折塞がれる。
甘い気分になりながら身を任せていたら、口の中に何かが侵入してきた。
ぎゃー、これが噂のディープキスってやつなの?
や、ちょっと、どう反応したらいいのか分からない。
「ちょ、国島さん」
「……八重が食べたい」
しかも言ってることが変態。
男ってこんなものなの?
彼のオデコに手をあてて、思いっきり引き離した。
「夕飯作った私に失礼ですよ」
「それは確かにそうだ。先に夕飯を食べよう」
「先にって……泊めませんよ?」
人の話聞いてんのか、この人。
まあでも、ようやく自由になれたので、国島さんの上着を預かりハンガーにかける。
「三十分前はもっと美味しそうだったんですよ」
出来たてのあの瞬間を見てもらいたかったのに。
面白くないな、もう。
こんな気持ち初めてだ。一緒に居れて嬉しいのにイライラして……。
優しくしたいのに冷たい口調しか出せない。
なんなんだ、これ。
「八重」
「なんですか」
「拗ねてんのか」
「はぁ?」
あ、でも。
それって一番今の私を言い得ているかも。