強引上司とオタク女子

逃げ場を求めるように、手を彷徨わせていると、ベッドの下の冊子に指先がぶつかった。
その拍子に、冊子の一部がベッドの下から顔をだす。


「あっ」


思わず叫んでしまって、国島さんの動きが止まる。

出てきたのは、昨日隠した同人本。
ちょっと表紙の際どいやつなので。


「きゃー、見ないでくださいーっ」


真っ赤になって、本を隠す私。
口を抑えながら、吹き出すのを堪える国島さん。


「もう! 笑うならちゃんと笑ってくださいよ」

「だってお前、机の下にエロ本とか、高校生男子かよ」

「エロ本じゃないもん。同人本だもん!」

「それにしたって」

「もうー、帰ってー!」


あまりの恥ずかしさに、私は彼を追い立てて立ち上がらせる。


「別に今更隠すこともねぇだろうよ」

「だって! 女の子の部屋っぽくしなきゃって思って」

「アニメキャラの抱きまくら懸賞当てるために、ポストに拝む程の女が何を言うよ」


ううう。
それ言われちゃったらそうなんだけどさ。

靴を履く国島さんの背中を見ながら、思わずポツリと呟いた。


「……だって、国島さんの好きな子って梨本さんみたいな子なんでしょ」


うつむいている私には、彼の足元しか見えない。
動きを止めた彼の表情がどんなものなのか、恋愛経験値の無い私には全く想像も付かないよ。


「あのな。昔の女は昔の俺の好みだろ。今の俺は八重が好きなんだから、お前が俺の好みの女な訳」


じゃあ私は私のままでいいの?

このまま、オタクで変わり者の女のままでいい?

少しホッとして、自分から顔をあげる勇気が湧いてきた。

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