柚と柊の秘密
「柊!やってくれないか?」
教室に入るなり、俺に土下座する勢いで頭を下げる男。
俺はそいつに向かって眉をひそめる。
「やらねーよ。
てか、親父と一緒にすんなよ」
ずっとそう言ってるのに。
だけどそいつは、尚もしつこく言ってくる。
「柊がボーカルやってくれたら、絶対上手くいくから!」
「まぁ……イケメンだからな」
そう言う、ウザい俺。
でもな、ボーカルなんて顔だけじゃない。
「俺、音楽なんて出来ないぞ?」
あんな親父だけど、音楽の教育をされたことなんて一度もない。
好きなことをやれとか言われたから、俺はサッカーに明け暮れた。
それなのに……
誤解しすぎだ。
だって俺の弱点は……ーーーー
恐ろしい音痴だから。