その瞳をわたしに向けて
「クックッ……何て顔してんだよ、別にうちに連れ込もうなんて思ってないから」


松田は自宅のマンションとは反対の方向に歩き出した。

仕方なく松田の後に続いてついて行くと、駐車場のすぐ隣の小さな赤い提灯のある店に入っていった

『鈴政』 そう書かれた暖簾を潜ると、中から「おかえりなさい」っと元気な女性の声が聞こえてきた。


店の中もそれほど広くなく、四人座れるテーブルが五ヵ所とあとはカウンター席だけ

いかにも、常連客しか来ないような少し古びた店だった

席はほぼ埋まっていて、若い女性客が珍しいのか、いきなり注目を浴びた

女将さんらしき人以外はいかにも40代以上の男性客ばかり


「カウンター奥でいい?剛平君」

女将さんにそう言われて、松田は美月を奥へ行くよう顎で促した


メニュー表はなくて、壁に貼ってある短冊に書かれた定食や、カウンター前にある一品料理のメニューに目をやった 

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