その瞳をわたしに向けて
徐に顔を覗きみる常務の視線を避ける
地位がほしいが別れないって……それって愛人囲うってこと?
最低じゃん…………
「さっきの話に戻るけど……君がこの会社に決めたのはなぜ?」
「……って言われても」
頭の中は立花さんを愛人にする杉村常務の姿しか思い浮かばなくて他が入って来ない
フッと口角を上げて静かに笑う常務
「分かりやすいね、今僕の事、最低って思ってるでしょ」
「…………」
何人かの社員が時々、杉村常務の所にビール瓶を持ってやってくるのをやんわりと断りつつ、美月との話を進める
「もし、この話が入社する前に清宮氏からされていたら、君は入社したかい?」
「えっ………いえ……たぶん入らなかったと」
「だろうね。君は少なくとも父親の言う通りにするお人形さん、ではないみたいだからね」
「………」
「そして、父親の傘下の会社で特別扱いされるのが嫌、なんだよね」
「………なにが言いたいんですか?」
杉村常務は、顔を上げて視線を田中さんに絡みながら突っ伏している立花さんに視線を移した
「僕は彼女と別れるつもりはないよ、結婚だって彼女としか考えてないからね。」
「えっ………」
「出世の話だって、本社の上層役員が勝手に言ってるだけで、興味なんて無いんだ。」
杉村常務を見上げる美月に、視線を向けていつもの柔らかい笑顔をした
「ただ、それを言った処で、全然聞き入れてくれないんだよ。困ったもんだろ……」