その瞳をわたしに向けて

食事もそこそこに少し体を崩した常務は、軽く膝を立て手をついて楽な体勢になった。


そこで美月は、その膝にそっと手を添えた


「もし、私が結婚したいって言ったらどうするんですか?」


少し見上げるような仕草で大きな瞳を常務に向けた。


老若男女、このスマイルで結構堕ちるんだけど………


常務の眉が一瞬だけピクリと動いて、すぐにいつもと変わらない笑顔をしながら、美月の耳元に口を近づけてきた



「光栄だね……君みたいな綺麗な子に好かれることが出来たら、一生の自慢になるよ」


そう言って膝に添えた美月の手の甲にそっと手を重ねてきた


「!!」


予想外だった……いつもと同じ穏やかな笑顔なのにその目が異常に色っぽくて

男性特有の低音の声のが美月の耳元をくすぐり、綺麗な翠色がかった切れ長の瞳が近づいた途端、顔が一気に赤くなり、思わず手も引き払ってしまった


35歳、伊達にこの色気のあるイケメンで独身を通してきてなかった………

この人はこうやって敵を作らずに数々の女性をかわして来たんだろう

そしてその怪物のようなイケメンと結婚まで持ち込んだ立花さんっていったい………?


体勢を立て直して座り直すと、隣で常務はクスクスと口に手で押さえながら笑っていた

「……私にどうしろって言うんですか?一応今まで知らなかったんですから」

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