その瞳をわたしに向けて
「聞こえない、なにも聞かない」
追い掛けて来て、多少息を切らした剛平の声を持つその人に背を向けた。
「聞けよっ、このバカが………お前はぁ30代の体力舐めんなよっ」
もう、逃げないように腕を掴まれたが、両手で耳を塞いで目を瞑って、首を振った。
そうだった、『鈴政』は剛平が連れてきてくれた場所なんだから、日本に帰って来て婚約者を連れてくる事だってあるんだっ
どうしよう
どうしよう、いやだそんなの見たくない。
「ううっ…………ひぃっ……」
いっぱい泣いたのに、まだぶり返すように溢れだす
「…………ごめっ…………いや……だ聞かなっ」
うずくまったまま、耳を塞いでいた両腕だけ引っ張り上げられた、松田の顔を見られない。
大きな溜め息だけが目の前で感じた
「…………美月、俺なロサンゼルスに3年いたんだ。仕事ばっかりに結構打ち込んで………
取引先の彼女に出会ったのは3ヶ月くらい前で、お前と同じ年だったからつい…………」