キミに出会うまで
今度の打ち合わせに向けて、優樹は商品リスト作りで忙しそうだった。


予定では、ゴールデンウィーク明けにシステムを変更していく。


優樹はそれまで残業続きになりそうで、私は手伝ってはいてもあんまり役に立てなくて、申し訳なかった。


ふたりの時は優しいけど、仕事では容赦なく怒られる。


当たり前だから仕方ないけど、何もできない自分が悔しかった。




そして、てっちゃんが本社にやって来た。


部長が会議室へ案内して、優樹と私もあとに続く。


明日香先輩とひとみちゃんが、小声で『がんばって』って励ましてくれた。



部長は午前中いたけれど、午後は来客があるとかで席を外すって言って、お昼前に会議室を出てしまった。


「では、あらためて午後からもよろしくお願いします」


優樹がしめて、お昼休憩に入った。


私が席を立つと、


「優花、一緒に昼メシ食べに行こう」


てっちゃんが普通に誘ってきた。


「私は坂本です、あと、お昼は用意しますので、そちらで食べてください」


一緒に食べに行くなんて、無理。


「冷たいな、どこか美味しいとこ連れていってくれよ、東京は久しぶりだし」


今にも私の腕をつかみそうな勢いのてっちゃんと私の間に、優樹が入ってきた。



「仕事とプライベートは区別したほうがいいと思いますけど」


「今は昼休みだろ、俺が優花と昼食べに行ったら、何か問題あるわけ?」


「お知り合いだとしても、下の名前で呼ぶのはどうかと思いますが」


「ただの知り合いじゃないから呼ぶんだろ」



「やめてください、13時集合ってことで解散しましょう」



私が優樹をかばうように前に立って、一触即発の雰囲気はとりあえずなくなった。




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