キミに出会うまで
3人で飲んでから数日後。


「では、いったん打ち合わせは終了して、あとは森さんに詰めてもらうか」


「はい、承知しました」



部長と森さんの会話をぼんやり聞いていた。


これからは、森さんと言い合いしなくてもいいんだ。


エネルギー使うから、疲れるんだよね。


どこかでホッとしている自分。




「坂本さん、この資料元に戻しておいて」


部長の声で、はっと我にかえる。


「はい、戻してきます」




ファイルを2冊抱えて、会議室から資料室へ向かう。


両手がふさがってるから、資料室のドアをひじで押そうとしたら、急にドアが軽くなって、


「わっ!!!」


と思わず叫んでしまった。




「変な声出すなよ」


頭の上で、森さんがドアを押してくれていた。


「あ、ありがとうございます」


「貸せよ」


「ファイルですか?」


「他に何か、貸すもんがあるか?」


「・・・ないですけど、っていうか、もうちょっと優しい言い方できないんですか?


ほんとに名前負けしてるっていうか」


「なんだよ名前負けって、おまえだって『優しい』っていう漢字が入ってんのに、正反対だろ」


「そんなことありませんよ、好きな人には優しくするんです」


「俺だってそうだよ、好きでもないヤツに優しくなんてしねーし」



気まずい沈黙。


せっかくドアを開けてくれたのに、言い過ぎたかも。


すると、空気を変えるように、森さんが言った。




「優花、夕飯おごるって約束、どこ行きたいか決まった?」


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