気になるパラドクス
「村居さん。今夜、お暇ですか?」

磯村くんにいきなり予定を聞かれて、驚いて顔を上げた。

「どうして?」

「プロジェクトメンバーで飲みに行く話が出てまして」

「接待は計上しないですよー?」

磯村くんが笑顔になって、片手を振る。

「そんな堅苦しいのじゃないですよ。黒埼さんから、飲みに行きましょうって話になりまして……」

「残業だと思うから無理」

キッパリハッキリ答えると、磯村くんのすんなり頷いた。

「そうだと思いました。まぁ、脈なしだとも伝えておきます」

「うん。そうし……」

脈なし?

ポカンとして顔を上げたら、磯村くんの笑顔が微かに困っていた。

「本当に気に入られていましたね。ともかく、次回のミーティングは、他の営業部員が入りますから、事務員は不要になります。今回は申し訳ありませんでした」

「ああ、いいえー」

事務員のミスフォローは、私の立場なら当たり前だわ。

たとえ残業になったとしてもね。







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