気になるパラドクス
今よりも若くて、ちょっとだけ眉が細い。当時は細眉が流行りだった。
髪は下ろしてポンパドールにしていて、まぁ、天パのクリンクリンが半端ない。

両手でフロップのキッチンセットを持って、笑顔で写っている若い頃の自分を見て苦笑した。

「そっか。この頃ってつり目が嫌で、伊達眼鏡かけていましたね~」

「え? 村居さん、そんなにキツいつり目じゃなくない?」

「年と重力には逆らえないんだと思うのよ」

笑って真理さんとガールズトークしかけたら、後ろからガシッと頭を掴まれた。

「ちょ……っ? 黒埼さん?」

頭を掴まれているから振り向けないけど、人前で何をするんだあなたは!

「これお前?」

アルバムの中の私を指差し、低い声で呟いている。

……なんだろ。怒ってるのかな?

「うん。私みたいよ? 写真撮った事なんて記憶にもなかったけど、間違いなく……っ」

今度は後ろからお腹の辺りに手をまわして引き寄せられて、肺の空気が一気に出ていった。

く、苦しい、苦しいんだけど。
間違いなく抱きしめられて、密着した身体の体温に、みるみる身体中熱くなるし、どうしよう?

「ああ。村居さんが大変みたいよ、兄貴……?」

真理さんの冷静な声も、お父さんの無表情も無視して、黒埼さんは離してくれない。

「黒埼さん?」

「ごめんね。村居さん。兄貴ってこう見えて乙女だからさぁ。何だかよくわからないスイッチがたまに入るんだよね?」

真理さんの言葉に眉を寄せる。

いや。一連の出来事と、黒埼さんが乙女スイッチオンなのが全く結び付かないんですけど?

考えていたら、真理さんがアルバムの中の私を眺めつつ、どことなく納得した表情になった。

「そっか。ミリーなんだ」

ポツリと呟かれた言葉に彼女を眺める。私の写真とミリーになんの関連があるって言うの。

「ほら。この時の村居さん。白いふわふわコート着て、髪もふわふわクルクル可愛い感じだし。眼鏡だけが何だか違和感あるけどさ。そう言うこと?」

いや、だから?

小首を傾げたら、耳元で低い声が囁いた。

「少し黙れ、真理」
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