気になるパラドクス
「いろいろあったんだなー」

まぁ、いろいろあったんですよ。

小学3年の時には、すでに160センチあった身長。

その頃は髪もショートヘアで、スカートめくりが流行ったから、夏場はキュロットにTシャツという格好。

それで元気一杯に赤いランドセルを背負っていたら、公園デビューしたてのママさんに『お姉さんのお下がりのランドセルなの?』って不思議そうにされた。

その時には、まわりのママさんたちが慌ててその人を止めていたけど、私には姉はいないし、その人が私を男の子と勘違いした事を、まわりの言動からうっすらとわかったし。

それはつまり、私には“赤”が似合わないということもハッキリわかった。

中学に入ると強制的に制服はスカートで、制服を着ていたらまわりの男子からは『男女』と呼ばれていたし、友達と買い物に行く度に、かわいいものより、私はクールなものが似合うと力説されて、王子様呼ばわりされた。

高校では、好きだった男子に『見下ろされると怖いよな』って言われた。

大学に入ると、そこそこ私より身長の高い人も現れたけど、『村居は恋人っていうより、男友達』と断言されたり、付き合ってもこっそり集めたかわいいものに引かれたり。

強制的に『似合うと思う』と、ライダージャケットもらった時にはへこんだし。

それでも趣味は可愛いものだし。

歴代彼氏には『似合わない』って言われ続けていたし、しまいには……。

「背の高い女と、男の人は結婚したくないんでしょう」

「は?」

え?

気がつくと、呆気にとられた黒埼さんと目があって、瞬きを返した。

「えー……と。あんたは俺より背は小さいし、逆にちょうどいいけど。まだそこまで、具体的には想像してなかったが……」

一般論みたいな独り言を、自分に言われたんだと勘違いした!?

「ご、ごめん。一般論、一般論だから!」

「まぁ、逆プロポーズとして考えるかな。俺もそろそろ親に孫抱かせろとか言われるし」

「ちょ……っと待って! 独り言、独り言を言っただけだから!」

考えないで! 考えられても困るから!
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