気になるパラドクス
社長なら社長らしく、それらしい格好があるような気もするんだ。
今日だって、足元は黒いスニーカーに黒のチノパン。
シンプルな灰色のセーターを被るように着ていて、しかも、腕に持っているのはミリタリージャケットだよね?
「見えなーい」
「軽くディスられた?」
そんなわけじゃないけど、見えないものは見えないし。
「もしかして、スーツでいろとか言うなら勘弁してくれ。窮屈で嫌だ」
心底嫌そうな表情に、スーツ姿の黒埼さんを想像してみて……。
吹き出した。
「……笑うところか?」
ちょっぴり困ったように笑われて、片手を上げる。
「ごめんなさい。絶対に似合わないな……って思えちゃって」
「まぁ、わかってるけど。たまには着るよ。銀行に融資頼みに行く時とか」
ああ、それはさすがにキチンとして行かないといけないよね。
考えていたら、首を傾げられた。
「それで、昼飯か?」
「はい。黒埼さんは外ですか?」
「いや。ここで食う。また社員入口で出入りの手続き面倒だし」
来客用プレートを見せながら、黒埼さんが苦笑する。
「黒埼さんはお客様なんだから、表からいらっしゃればいいのに」
「いやー……受付で待ってるのも面倒だし。勝手に入って来て、また警備員に捕まるのも嫌だし」
言いながら自動販売機を見るからよけると、彼は小銭を入れてコーヒーを買った。
「村居さん、社食に行く?」
「……ええと。どちらでもいいんですけど」
「んじゃつきあって」
コーヒーを取って歩きだしながら、黒埼さんが手招きする。
「んー……あまり一緒にいない方が、私としては嬉しいんですが」
一応、並びながら呟くと、不思議そうな顔をされた。
「もうそんなに噂になってるか?」
「ええ。そもそも、私自体が営業部ですし、営業部の後輩があの時も……」
そう言いかけて、どこか得意そうにしている黒埼さんを見上げる。
「……わかっていてやりましたね?」
「うん。企画の山本さんからちらっと聞いていた。営業部は噂の早さが半端ないって」
そう言って、コーヒーを放り投げながら、腰を屈めて私を覗き込んだ。
「合コンに参加するから悪い。誘われたって聞いたし、それなら誘われないようにすればいいかと思ったから」
だ、だからって、あんなことをする必要はないでしょ!
ムッとして唇を尖らせると、彼はクスクス笑いながら頷く。
「断り切れない事もあるけどな」
それもそうよ。私とあの場で会ったって事は、黒埼さんだって参加していたんじゃないか。
今日だって、足元は黒いスニーカーに黒のチノパン。
シンプルな灰色のセーターを被るように着ていて、しかも、腕に持っているのはミリタリージャケットだよね?
「見えなーい」
「軽くディスられた?」
そんなわけじゃないけど、見えないものは見えないし。
「もしかして、スーツでいろとか言うなら勘弁してくれ。窮屈で嫌だ」
心底嫌そうな表情に、スーツ姿の黒埼さんを想像してみて……。
吹き出した。
「……笑うところか?」
ちょっぴり困ったように笑われて、片手を上げる。
「ごめんなさい。絶対に似合わないな……って思えちゃって」
「まぁ、わかってるけど。たまには着るよ。銀行に融資頼みに行く時とか」
ああ、それはさすがにキチンとして行かないといけないよね。
考えていたら、首を傾げられた。
「それで、昼飯か?」
「はい。黒埼さんは外ですか?」
「いや。ここで食う。また社員入口で出入りの手続き面倒だし」
来客用プレートを見せながら、黒埼さんが苦笑する。
「黒埼さんはお客様なんだから、表からいらっしゃればいいのに」
「いやー……受付で待ってるのも面倒だし。勝手に入って来て、また警備員に捕まるのも嫌だし」
言いながら自動販売機を見るからよけると、彼は小銭を入れてコーヒーを買った。
「村居さん、社食に行く?」
「……ええと。どちらでもいいんですけど」
「んじゃつきあって」
コーヒーを取って歩きだしながら、黒埼さんが手招きする。
「んー……あまり一緒にいない方が、私としては嬉しいんですが」
一応、並びながら呟くと、不思議そうな顔をされた。
「もうそんなに噂になってるか?」
「ええ。そもそも、私自体が営業部ですし、営業部の後輩があの時も……」
そう言いかけて、どこか得意そうにしている黒埼さんを見上げる。
「……わかっていてやりましたね?」
「うん。企画の山本さんからちらっと聞いていた。営業部は噂の早さが半端ないって」
そう言って、コーヒーを放り投げながら、腰を屈めて私を覗き込んだ。
「合コンに参加するから悪い。誘われたって聞いたし、それなら誘われないようにすればいいかと思ったから」
だ、だからって、あんなことをする必要はないでしょ!
ムッとして唇を尖らせると、彼はクスクス笑いながら頷く。
「断り切れない事もあるけどな」
それもそうよ。私とあの場で会ったって事は、黒埼さんだって参加していたんじゃないか。