気になるパラドクス
「オーナーさんて大変ね」

「そうだなー。まぁ、弱小なんで」

「都内で何店舗あるの?」

片手を上げられて、キョトンとした。

「あれ? 五店舗?」

フロッグすてっぷって、それしかなかったかな。

「うちの直営店はね。雑貨屋に卸したりもするし、どちらかと言うとネット販売が主だから。でも、今回のプロジェクトで全国展開になったか……」

考えるように見下ろされて、いきなり頬に触れられる。

ビックリすると笑われた。

「な、何?」

「いや。寒そうだなーと思って」

だからって、いきなり触るの?

「手袋でもプレゼントするかな」

「どうしたの、唐突ね」

黒埼さんは微かに目を細め、嬉しそうに手を差し出してくる。

……何をくれと?

じっと手を見ていたら、じれったそうに手を握られて、また驚いた。

「俺、フラれてないみたいだし」

「え……?」

「脈がなければ、お前は速攻で断るみたいだな?」

ニヤニヤされて顔をしかめる。

どういうこと? 私は何か、黒埼さんに勘違いさせるような……?

「俺は好きって言っただろ?」

「あれは、だって……」

困ったな。確かに言われたけど。

だからって急に、そんなこと言われてもさ。黒埼さんという人が、私にはよくわからないし。

繋いだ手を、ズボッとジャケットのポケットに入れられて、無言で歩く。

こういうこと平気でする人って……あまりいないから。

ちょっと戸惑う。

「ところで、クリスマスは暇?」

「イブは普通に仕事。って、黒埼さんもクリスマス目当て?」

「当たり前。クリスマス当日は?」

当日? 当日だって仕事だよ。今年は24日も25日も平日……。

「25日は金曜日だから。暇なら仕事帰りに食事に行かないか?」

ポッケの中で手の甲を撫でられて、顔を赤くする。

……それって。あの。

「もちろん泊まりで」

そう言われて、ボッと音がしそうなくらい身体中が熱くなった。
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