気になるパラドクス
私にも“それくらい”の意味はわかるよ。

クリスマスが聖なる夜と言うよりも、単に年に一度、派手に盛り上がるイベントになっていたりする。

もちろん、職場の仲間や友達とパーティーをして盛り上がる人もいるし、特定の“誰か”がいるなら、その人と……。

クリスマスにお泊まりデートってことだよね?

それ、誘われちゃったって事だよね?

……めちゃくちゃいきなり距離詰めてきたなー。

ポケットの中で手を繋ぎ直すと、今度は黒埼さんが驚いたように私を見下ろした。

思えば、黒埼さんて最初から私を“女の子”扱いしてきてたんだよね。

もう、何て言うか……徹底的に。

「ズルいと思うんですよ」

「何がだ?」

黒埼さんが訝しむような顔をして、首を傾げた。

「原くんと別れて、すぐに誰かと付き合うのって。忘れるためだけに付き合うみたいで」

視線を逸らして前を向くと、黒埼さんは目を細めてふっと息を吐き出すようにして笑う。

「抱かせろって言ったら、もの凄い勢いで怒られたよなー?」

「それは当たり前の話ですから」

「真面目だなぁ」

つくづく呆れたような声音に、思わず彼を見そうになって、頑なに視線を前に向けた。

今、彼を見たら最後まで言えない気がする。

「背が自分より高いとか、女の子扱いしてくれるからとか、そんな条件で付き合うのもおかしいし」

「女の子扱いって、女だろ?」

そうなんだけど、あまり女の子扱いしてくれる人は少ないし……。

「……嬉しくて困るの」

「嬉しくて困られても困るんだが」

そうだけど。そうなんだけどさ!

「でも、嬉しいならいいじゃん? 最初なんて青ざめたからなー」

「だって、いきなり見知らぬ男からズカズカ詰め寄られて、怖くないはずがないでしょ!」

唇を尖らせて、とうとう黒埼さんを見上げたら、その唇に軽くキスをされた。

一瞬、何が起こったのか理解できなくてパチクリとしたら、楽しそうな彼が、今度はしっかり唇を合わせてくる。

ちょ……っ!
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