気になるパラドクス
「どうかした?」

考え込んでいるような顔だな。

「お前、髪下ろして、眼鏡かけていなかったか?」

いきなりどうしたの?

「目は悪くないけど?」

眼鏡なんてかけない……けど。

「いつも白いコート着てなかったか? えーと……10年前」

「覚えてるわけないでしょうが、そんなもん!」

怒鳴り付けたら、ガッカリされた。

「だよな~。そうだよな~」

「なんなのよ。いきなり10年前って」

黒埼さんはちょっぴり不満そうにしながら、並んでいるマグカップを手に取っていた。

「俺が店番してた当時。よく店に来ていた常連の人がいて。ストラップ買い占めていたから」

「ふーん?」

私も買い占めていた記憶もあるけど、似たような事をしていた人がいるんだねー。

「ちなみにコレ可愛いか?」

赤いマグカップに、白いワンピースの女の子イラスト付き……を突きつけられて寄り目になった。

「うん。まぁまぁ可愛い」

「じゃ、買ってくる」

は? なにを……?

話題を変えすぎじゃないの?

でも、黒埼さんはなんのつもりか、もうひとつ青いマグカップも手に取ってキャッシャーに向かった。

「ちょ……ちょっと?」

無視されてムッとしながら唇を尖らせる。

私としては女の子キャラより、動物とか花の方が好きですよー?

まぁ、聞いてないだろうけどね。

とりあえず、会社の近くにこんな雑貨屋さんが出来たとは知らなかったかな。まぁまぁ好みと言えば好みだけど……。ここのはちょっと大人女子的な可愛らしさだよね。

うーん。会社でビックリされないくらいかな。でもなー……うーん。
ノートくらいは持ち歩ける程度だけど、うーん。

「何を悩んでるんだ?」

会計を終えて戻ってきた黒埼さんを見上げる。

「ううん。大学ノートでいいかと思って」

「ノートなんて使うのか?」

「たまに。ローカルなんですよ」

言いながら、背中を押されて店を出る。

「もういいの?」

「コンセプトが違うのわかったし。お前の好みはけっこうゆるふわ系だって理解した」

「……わかってたんじゃないです?」

フロッグすてっぷは、ほとんどゆるふわ系でしょうに。

軽く睨むと、軽く笑われた。

「ところで、付き合い始めたってことでいいんだよな?」

「え……?」

「付き合い始めたんなら、微妙にたまに出てくる敬語をやめない? それとクリスマスは大丈夫?」

……改めて、聞かれるとは思ってなかったわー。

でもって、改めて聞かれたら、こんなに照れるものだとも、思っても見なかった。
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