気になるパラドクス
付き合いだしたの昨日でしょうが!

昨日の今日で『さあどうぞ』と、なるはずがないじゃないか!

「あ。そっか。常識がないんだった」

ポンと手を打つと、かなり困った顔をされた。

「……その納得の仕方は嫌だな」

しょんぼりされても。

本気で期待しているのかな? まさかねぇ?

もちろん、彼氏でもない人を部屋に上げる事はないけど、彼氏になった人を部屋に上げるのは、その……。

「襲わないって約束するから」

確かにそれも考えるけど。

「……いろいろと問題があるんだよね」

「具体的には?」

「趣味が丸出しの部屋だから、男の人をあげたことがないし……」

途端に黒埼さんの表情が輝いた。

「それは絶対に行きたい」

頭の中にあるのはデザイナーとしての好奇心なのかな。それとも“初めて”に強い憧れを抱く男性心理なのかな?

「ご飯は……どうしますか?」

「あ……オーケーなんだ?」

あっさり言われて、眉をしかめた。

「なんでそう理解したの?」

「美紅は、否定するときはちゃんと否定するが、了承するときは何も言わないと気がついた」

……そんなことは、あまり理解を示さないでちょうだい。

「……電車で帰ることにしまーす」

「おい、コラ。お前のそういうところ、本当に困るぞ」

「私はいつも困ってるもんね」

ヒラヒラ指先を振ってから、諦めたように黒埼さんを見上げた。

「引かないでね?」

「そこは心配するな。俺はあらゆる事を想像するのが好きだ」

いや。よくわかんないけどさ。

そんなわけで、近所のスーパーで夕飯の食材を買ってから、黒埼さんはうちに来ることになった。
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