気になるパラドクス
***



「わー……」

部屋に入るなり、頭上から聞こえてきたのは棒読みの『わー』だった。

玄関を開けると、出迎えてくれるのは白いレースのカーテン。
暖かみのある木目のフローリングの廊下を抜けると、ダイニングキッチンにリビングが見える。

「おおー……」

今度は『おおー』ですか。

「さすが大手商社の会社員。いいとこ住んでんなー」

「……資産価値を測る男は嫌われるわよ」

黒埼さんはニヤッと笑って、辺りを見回した。

アンティークローズ色の壁には姿見が立て掛けてあって、パステルカラーの蝶々と、鮮やかなリンゴの樹のウォールステッカーを貼っている。

その脇には、フロッグすてっぷのピンクの椅子二脚に、丸くて白いテーブル。その下にはピンクのラグ。

反対側には白のテレビ台に、白枠のテレビ。可愛らしいのチェストの上には、フロップとミリーがたくさん。
その横にアンティーク調のスタンドライト。

その奥にはピンクのドレスカーテンが引いてあるけれど、寝室に続いていて、レースのカーテン越しに、毛足の長い白のラグと、やっぱりアンティーク調のベッドが微かに見える。

全体的に白とピンクと猫足家具と、たまにフロップの鮮やかな黄緑がアクセント的な感じの部屋。

「まぁ、想像通り……より、少しだけ姫系の部屋か。椅子は花だったんだな。なら、これでよかった」

「これでよかった?」

キッチンに買い物袋を置くと首を傾げる。

見ていたら、黒埼さんは鞄から何か大きな物を取り出した。

出てきたのはふわふわの白い雲みたいな形のクッション。
それから、この間見せてくれた、かわいいピンクのカエルさん。

「渡しそびれたから」

「試作品、くれちゃうの?」

「うん。お前のこと考えながらデザインしたもんだし」

それは“私自身”の事を考えて? それとも“私へのプレゼント”として考えて?

……もしかして“私自身”の方だったら、平気な顔して、とんでもなく恥ずかしいことを言うんだな。

「美紅。顔赤い」

笑いながら優しくからかわれて、ピンクのカエルさんはチェストの上のフロップの隣に置かれた。
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