ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
2ー5、うちのクラスの前に着いた。
暑いのにドアはぴったりと閉められ、中はやけに静かだ。
ゆっくりとドアを開けて中に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのは、花瓶だった。
絵留と真斗の机に、白と薄紫の菊の花が飾られていた。
それを見て、心がさらに苦しくなる。
私のせいで、ふたりは……。
壊れてしまいそうなほどに心が痛むので、できればそれについて考えずにいたい。
でも、この学校に通う限りは、目に入る物全てが絵留と真斗に結びついてしまいそうで、苦しみから逃れる方法はない。
それが私に与えられた罰だと思えば、受け入れようと思うけれど……。
教室に一歩入ったところで立ち止まってしまった私に、琴美が近づいてきた。
「霞、おはよう」
「おはよう……」
挨拶を交わした後は、お互いに言葉が続かなかった。
楽しいお喋りなんて、してはいけない気がする。
かと言って、暗い話題も口にしたくないから、何を話していいのか分からず困ってしまう。