ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
クラス内には3分の1ほどのクラスメイトたちが来ているが、みんな自分の席に座って、スマホをいじったり、終わっていない課題のプリントを静かにやったりしていた。
夏休み前は、明るいクラスだった。
賑やかで、バカを言い合ったりはしゃいだり、楽しいクラスだった。
それが今は別の教室に入ってしまったかのように、静かだ。
シーンとした中で何か話さなければと思い、「課題終わってる?」と琴美に話しかけたら、背後に人の気配がした。
振り向くと、ドアから入ってきたのは敬太。
久しぶりの敬太の顔を見上げて、私は言葉をなくしていた。
目の下には濃いクマが。
頬はこけて、かなり痩せたように見える。
いつも自信に満ちあふれていた瞳は悲しげで、私の知っている敬太とは別人のような人が立っていた。
眠れているのだろうか……ちゃんと食べているのだろうか……。
そんな心配を心の中でして、ただ敬太を見つめていた。
すると敬太は苦笑いして、私の頭にポンと手を置き、「おはよ」と言ってから横を通り過ぎていった。