ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「敬太……大丈夫かな……」
自分の席に向かう敬太を見ながら、思わずポツリと呟いた。
「まだ大丈夫じゃないみたいだね……」
私の独り言に、横にいる琴美が小声で返事を返してくれた。
いやに静かな教室に、朝のホームルーム開始のチャイムが鳴り響く。
登校しているクラスメイトは25人。
3人足りないのは、ショックから回復できずに学校に来れなかったということなのか……。
ドアがガラリと開いて、担任の先生が入ってきた。
数ヶ月前、桜井先生の後任でうちのクラスを受け持ったのは、加藤先生という31歳の男の先生。
先生も目の下にクマを作り、疲れた顔をしていた。
クラスでキャンプに行くことを先生は知らなかったが、もしかしたら責任を追及されたり、責められたのかもしれない。
それについても申し訳なく思い、私は小さなため息を机の上に吐き出した。
「みんな、おはよう!
今日から2学期が始まるが……」
教壇に立ち、私たちに向けて話す加藤先生の声は、疲れた表情とは逆に、変に明るく力がこもっていた。