ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太は再び拳を机に叩きつけた。
こんなに怒りをあらわにする敬太は初めてで、私もクラスのみんなも、先生さえも絶句している。
全力で怒鳴ったため、荒い呼吸を繰り返している敬太。
その怒りを、私たちは呆然と見つめるしかできなかった。
驚きと同時に、敬太が真斗の死に責任を感じているのだと知り、心がズキズキ痛み出す。
敬太のせいじゃないのに……。
それは、ナニカを呼び出してしまった私のせいなのに……。
静まり返る教室内。
数秒の沈黙の後、敬太は鞄を乱暴に肩に掛け、ドアに向けて歩き出した。
「柏木、どこに行く?」
「帰ります。怒鳴ってすみませんでした」
ドアがガタンと力任せに閉められ、敬太の背中が廊下に消えた。
廊下に響く敬太の足音が、遠ざかる。
慌てて私も鞄を手に、ドアへ向かった。
「先生、私も帰ります。ごめんなさい」
「こら、遠野、待ちなさい!」
廊下に飛び出して、敬太を追いかけた。
小さく見えていた白いワイシャツの背中が、階段の方に消えていく。
走って追いかけたが、階段に出たところで、敬太の姿を見失ってしまった。