ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太はフェンスの外側には立っていなかった。
奥の方で、コンクリートの地べたに、ただ寝転んでいるだけだった。
あ……なんだ、よかった……。
飛び降りじゃなかったことにホッとして大きく息を吐き出すと、ゆっくりと敬太の側に歩み寄った。
空は憎らしいほどに晴れていて、まぶしい。
敬太は仰向けで、右腕を顔の上に乗せて日差しから目を守っている。
「敬太……」
小さな声で呼びかけて、隣に体育座りをした。
すると敬太は寝返りを打ち、私に背を向けてしまった。
そのこめかみが、太陽の光をキラリと反射させていた。
涙……。
それを見て、敬太が屋上に泣きに来たんだと知った。
胸がズキズキと痛んだ。
敬太から親友を奪い、こうして泣かせているのは私なんだよね……。
慰める言葉なんか見つかるはずもなく、私は敬太の背中を見ながら黙っていた。
日差しを遮るものがなくて、ここは暑い。
このまま太陽の熱に溶けて、私の罪も消えてくれないかな……苦しさの中で、そんな身勝手な願望が湧いてきてしまう。