ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
それからしばらく、ふたりとも黙っていたが、やがて敬太が独り言のようにポツリと呟いた。
「真斗……ごめんな……」
敬太の肩が小刻みに震えていた。
鼻をすする音も聞こえる。
「ごめん……真斗、ごめん……」
繰り返し謝るその声も震え出し、涙の量が増しているのだと気づいた。
私は胸の痛みに加えて、しめつけられるような苦しさも感じていた。
私のせいで、敬太はこんなにも悲しんでいる……。
敬太を見ていると罪悪感は色濃くなっていき、私の目にも涙が浮かんだ。
その涙が溢れてこぼれ落ちた時、真斗に向けて謝り続けていた敬太が、今度は自分を責め始めた。
「ナニカから逃げる時、真斗に絵留を頼むって言わなければよかったんだ……。
肝試しも、やらないって言えばよかった……。
キャンプをやめようって、言えばよかった……。
全部俺のせいだよ。真斗は俺が殺したような、もんだ。ごめんな……」