ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「ナニカに頼んでって……霞、どういうことだ?」
その問いに答えずに、私は駆け出した。
罪を打ち明けたことで、敬太に嫌われた……それは覚悟していても、面と向かって罵られるのは怖いから、逃げたくなってしまった。
「霞、待てよっ!」
私を止める敬太の声が、後ろに聞こえる。
それでも立ち止まらずに、屋上のドアまで走った。
サビの目立つ鉄のドアまでたどり着き、ドアノブを掴んで回そうとしていると、追ってきた敬太に捕まってしまう。
「待てって……」
「や、離してっ!」
腕を掴まれて、私は逃げようともがいた。
すると敬太は私の背中をドアに押し付け、私の両サイドに腕を突き立てた。
ものすごく怒っているんだ……。
どうしよう、罵られるだけじゃなく、殴られてしまうかも……。
怖くなってぎゅっと目を閉じ、両腕を顔の前でクロスさせて身構えた。
すると、敬太のため息が私の腕に降りかかる。
「殴ったりしないよ……。
霞、頼むからちゃんと話してくれ。
ナニカに頼んだって、どういうことだ?
なぁ、教えてくれよ……」