ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
向かう先は東階段を上った突き当たりの、踊り場。
この階段は屋上には繋がっていなくて、突き当たりには3畳くらいのスペースがあるだけ。
滅多に人が来ない場所なので、「ゆっくり飯が食える」と敬太が言い出したのだ。
踊り場に着いて、一段下に足を下ろして座り、膝の上でお弁当を広げる。
「小さい弁当だな。そんなんで足りんの?」
敬太は私のお弁当を見て、そう聞いた。
別に小さくないと思う。
片手サイズではあるけれど、2段のお弁当箱だから。
そんなことを言う敬太のお弁当箱は、私の顔くらいもあるビッグサイズ。
「足りるよ。敬太こそ大きすぎ。
食べ切れるの?」
「よゆー。足りねーくらい」
お互いのお弁当箱を比べて、そんな他愛もない話をし、一緒に笑った。
ああ、幸せだな……そう思った時、頭の中に絵留と真斗の顔が浮かんできてしまった。
途端に私は笑えなくなる。
箸を置いて、ため息をお弁当の上にこぼした。