ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
「うるせぇよ……つべこべ言わず、俺の言う通りにしろ。
次の日曜の夜、学校でナニカを呼び出せ。
従わないなら……霞を嫌いになるぞ?
二度とお前と口きかねぇし、真斗を殺した殺人鬼だって思うことにする」
「……」
体がブルブルと震えていた。
こんなに怖い敬太を見たのは初めてで、涙目になってしまう。
私のことを好きだと言ったのは、嘘なのかな……。
私に言うことを聞かせるために、付き合おうと言ったのかな……。
そんな疑惑を抱いてしまった。
それでも私は敬太が好きだとハッキリ言える。
やっと1年半の片想いが実ったばかりなのに、彼女の座を失うのは嫌。
敬太に嫌われたくない……。
『霞は悪くない』と言ってくれた敬太に、殺人鬼呼ばわりされたら、生きているのも辛いよ……。
この恋を人質にされてしまったら、私に選択肢は与えられていないも同然だった。
震える唇を動かして、「わかった」と、ひと言返事をした。
敬太はニヤリと口の端を釣り上げる。
「それでいい。
霞、大好きだよ……」
敬太の顔がゆっくりと近づいてきて、再び唇が重なった。
ナニカに襲われ、血まみれになる敬太のイメージ映像が頭から離れない。
そのせいか、キスはほんのりと、血の味がしたーーーー。