ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
それから10分ほど経っただろうか……。
用具入れの上部には3本線を引いたような換気口が空けられているけれど、暑いし狭いし、息苦しくなってきた。
「敬太、ちょっと苦しくなってきたんだけど……」
小声でそう言ったら、「しっ」と耳もとで黙るように言われてしまう。
耳を澄ますと、コツコツと誰かが廊下を歩く足音が小さく聞こえてきた。
やっと見回りの人が来たみたい。
そのことにホッとするような、逆にドキドキするような、変な気持ちがしていた。
隣の教室のドアが、開けられて閉められる音がした。
その次にこの教室のドアがガラリと開けられた。
電気はつけていない。
持ってきた外靴や荷物は、机の中に押し込んである。
教室の電気がカチッと点けられる音がして、換気口から入ってきたまぶしい光が敬太の額に当たっていた。
鼓動がますます速度を上げる中で、じっと息を潜める。
見回りの人は私たちに気づくことなく、すぐに電気を消してドアを閉めて出て行った。