ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
外からの微かな光しか届かない教室内で、視界はぼんやりと物の輪郭をとらえる程度にしか効かない。
真ん中の席に座り、じっと考え込む私。
暗い教室でひとりぼっちにされても、不思議と怖くなかった。
むしろ、今はホッとしている。
ナニカに願ったフリだけすればいいんだと、土壇場で思いついた解決策に、気持ちはかなり楽になっていた。
しばらくして、敬太が教室に戻ってきた。
「お待たせ。後はこの辺をもう少し広くしたら準備完了」
そう言って私を立たせ、机と椅子を移動し始める。
教室の中央に丸い空間ができた。
敬太は体に斜め掛けしているボディバッグの中からロウソク1本を取り出して、床に立てて火を灯した。
「なんでロウソクなの?」
「儀式みたいで雰囲気でるだろ」
敬太が懐中電灯を消すと、ロウソクの火が教室の中央だけをぼんやりと照らし出した。
炎が揺れると、明るさもゆらゆらと変化する。
普段、電気の明かりしか見慣れていない私にとって、それは居心地の悪い明かりに思えた。