ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
うそっ、どうして⁉︎
「来たな」
敬太がそう呟いて、クククと乾いた笑い声を立てた。
私は思わず敬太の腕にしがみつき、音が聞こえてくる方向に視線を向けた。
窓ガラスがガタガタと音を立て、鍵がカチャリと開けられる音がした。
ゆっくりと開いた窓から強い風が吹き込み、ロウソクの火が一瞬にして消されてしまう。
真っ暗になった教室内で、私は悲鳴すら上げられずに震えていた。
ザアザアと降りしきる雨音が、窓が開けられたことでより一層大きく聞こえてくる。
その音の中に、あの音も混ざり込んでいた。
ザアザア……ブクブク……ザアザア……ボコボコ……。
「霞、よくやった。えらいぞ」
敬太は私を褒めてから、左手に持つ懐中電灯を灯して、それを窓に向けた。
窓から侵入してくるナニカの姿が、ハッキリと照らし出された。
真っ黒でドロリとしたスライム状の塊は、窓から床、そして近くにあった机の上に半身を上らせたところで、ブクブクブクっと体を大きく震わせた。