ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜
敬太がここにいなかったらどうしようと思いながら、残りの10段を足早に上った。
先に真斗が境内に立ち、一息遅れて私も赤土の地面に足を付けた。
敬太は……いた!
後ろ姿だけど、間違いなく敬太だ。
ああ、良かった……と思った次の瞬間、異変に気付いた。
敬太は台座に乗った石の狐の横に、立ち尽くしている。
まるで呼吸さえ忘れてしまったかのように、微かな動きもない。
そして前方から漂ってくるのは、生臭いような、鉄臭いような、血の匂い……。
目線を右側の敬太から、恐る恐る正面に向けた。
小さなお社に、古びた賽銭箱。
家を出た時よりも暗くなっている中でそれらがハッキリ見えたのは、狛狐から2メートルほど離れた場所に錆びた外灯が一本立っているから。
その外灯の黄色い光が、賽銭箱の前で仰向けに倒れている男性の姿を照らしていた。