ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



確かに敬太の着ている白いワイシャツにも制服のズボンにも、私をかばってくれる手にも汚れは付いていなかった。


敬太がやったんじゃないと分かって、私も真斗もいくらかホッとする。

でも、恐怖は消えない。


人間ひとりが目の前で死んでいる……。

それも、数時間前に学校で話をしていた先輩が……。



「敬太、私怖いよ……。
何があったのかな……誰に殺されたのかな……」


「決まってんだろ。ナニカだよ。
また、ナニカが出やがったんだよ」




敬太は犯人がナニカだと断言した。


桜井先生の時と同じように、飯塚先輩もナニカの存在を否定するような言葉を言ったから、ナニカを怒らせたんだって。



「飯塚先輩にはムカついたけどよ、ひでーよな……チクショー」



敬太には言えないけど、犯人はナニカのはずがないんだよ。

ナニカなんていない。

だって、私のついたウソなんだから。


敬太の腕の中で口には出さずに心で呟いた、その時……。


ギギギギィと、前方から軋んだ音が聞こえてきた。


< 63 / 247 >

この作品をシェア

pagetop