十八歳の花嫁
愛実には温かいカフェオレを、自分用にはコーヒーを淹れた藤臣がリビングに戻ってくる。
(わたしが、いろいろしてあげようと思ってきたのに……反対になってしまって)
自分はソファに座っているだけで、あれこれ気づかってくれる藤臣に申し訳なかった。
彼はそんな愛実に気づいたようで、
「どうした? 勝手にインテリアを決めて怒ってるのか? もしそうなら、一緒にカーテンやら食器を選びに行っても」
「違うの! ごめんなさい。黙って来てしまって。お料理とか……奥さんらしいことをして驚かそうと思っていたのに。結局、藤臣さんに迷惑をかけて……。お仕事中だったんでしょう? ……ごめんなさい」
愛実がソファの上に正座してうつむくと、彼女の髪を藤臣がフワリと撫でた。
「謝らなくていい。ビックリしたろう? 俺と入れ替わりで入ったのは、うちの女性社員なんだ。さっき、会社に連絡を入れたら、彼女が慌てて会社に電話してきたって」
噂の社長夫人がやって来て、ものすごい誤解をして出て行ってしまった。どうしよう、と半泣きで電話がかかってきたと報告を受けて、藤臣はもう大丈夫だと答えたらしい。
「す、すみません。わたし、何も知らなくて……。勝手に中に入ってしまって」
「いや、もっと早く連絡すればよかったんだ。のんびりしていた俺のせいだな」
「でも……本当によかった。あの女性と一緒にいたのが藤臣さんじゃなくて」
愛実は藤臣に手を伸ばし、腕に触れると、身体ごとソッと寄り添った。
「なんだ。本当に俺が浮気してると思ってたのか?」
愛実は無言でうなずく。
「それはあんまりだ。欲求不満に耐えながら、真面目に働いてるのに」
「ごめんなさい。でも……だって……」
「“でも”は聞かない。お仕置きが必要かな。まずは、君からキスしてくれ」
冗談か本気かわからなかったが、愛実はひざを立てて背伸びし、藤臣の唇にキスした。
コーヒーの香りがする、軽いキスだった。