勇気を出して、空を見上げて。
生徒会長に用事があって、生徒会室にいると思って行ったら文芸部室にいると言われて。中々入るに入れず、入り口辺りで留まっていたら声を掛けてくれたのが心音ちゃんだった。
それからちょくちょく話すようになったけど、話してるうちにこの子もそうなんじゃないかって分かってきて。
この間の、オーキャンの日。あたしだって意識こそあまりはっきりしてたわけじゃないけど、いつもと少し違った気もしたし、どこかおかしいと思ったからユズだって連絡先のことを頼んできたんだろう。
あたしだって、ただ助けられてばかりじゃない。
だから、こっち側に完全に来てしまわないように気を付けるようにはしてる。
こんなあたしにだってきっと、できることはあるはずだから。
でも、ユズには手伝ってもらってもいいのかもしれない。ユズから心音ちゃんと繋がったというし、星よりは適役だろう。
ユズの詳しい事情は知らないけど、心音ちゃんが星寄りだとはとても思えない。少なくとも、星の立ち位置とは対極のはずだ。
それに、星には別の仕事だってあるし。それはユズじゃできないことだから、やっぱり心音ちゃんにはユズがいい。
「心音ちゃん、またおいでよ。ってのもおかしいけど」
あたしの家ってわけじゃないし。
「おいでって……柚都さんたちの?」
「うんそう。ユズ、料理上手いから」
星もだけど、そっちは意図的に口にしない。
二人とも自炊で弁当も作ってるだけあって、料理の腕はそれなりだった。男であれだけ作れれば十分以上だろうと思うくらい。星は前から軽いものなら作れたけど。
「そんな、悪いですよ」
「えー。気にしなくていいのに。ユズ喜ぶと思うけど」
「でも私……忙しい、ですし」
「……あー……」
課外、か。さっきも友達待ちって言ってたし。この時間に学校に来る生徒は、課外か部活かどちらかだ。で、ここにいるってことは前者だし、そういえば心音ちゃんが文芸以外の部活に入ってるなんて聞いたことない。
それに、今は空きコマだとしても次の時間あるのかもしれないし。来週はまた課外が変わるから、違ってくるし。
「土日は?」
「午前中、習字習ってて。午後はまあ、あまり遊びに行けないし、行ける距離でもないし……」
「……心音ちゃん、友達と一日遊ぶ! って日、ある?」
「一日、はないですね、そういえば。七月に七夕祭りには行きましたけど、夕方からだったし。……あ、でも、カラオケとかは行きますよ?」
「だってそれでも帰るの早いでしょ?」
「まあ、暗くなると心配されるし……」
絶句、しそうになった。
あたしと違い過ぎる。星となんて正反対。思った通り、ユズよりだということは分かったけど。