優しい胸に抱かれて

『え、また? それまだ出してなかったの? 怒られちゃうよ?』

『だから頼んでんの。よっしーに怒鳴られるの嫌だもん』

嫌だもんって。ちゃっかりしてるのは平っちの方でしょ。と、怒りたくなった。が、この通りと両手を顔の前で合わせて、お願いされたら肩を落とすしかない。
 
『よっしーは経理課じゃないのに怒鳴られるの?』

『あいつ、すぐ総務課からしゃしゃり出てきて怒るんだぜ?』

『それだけ、だらしないからだよ。だから、いつもログ調べられるんだよ。わかった、ついでに郵便物も見てくるね』

『恩に着る、よろしく!』

目を思い切り閉じて懇願していたのはどっかに飛んでいって、ぱあっと花が開いたような満面の笑みを見せる平っち。いつもいつも、ほんと現金なんだから。

こんな調子で、2階にある総務部へ書類を届けるのはいつも私の役目で、遅いと怒られるのも私の役目。案の定怒られて、何度も釘を差された。

郵便物が届けられていないか総務課を覗く。郵便物は各部署宛のものが総務課に集結してあった。
 
『よっしー、お疲れ様。ついでに一課の分も貰っていくね』

『お疲れ様。今日も紗希が来たの? どうせ平っちでしょ、ほんとだらしないんだから。ログ調べなくても分かるんだからね』

期限を厳守しない平っちを、目の敵にするよっしーは楽しみの一環として、誰が処理したのか、誰が遅いのかと、処理内容を記録したログの確認を日課としていた。

『あはは、まあね』

『またご飯食べよ?』

総務部へ足を運ぶのは嫌ではなかった、よっしーとちょびっとだけ立ち話ができるから。ただ、周りの目が気になり長居できないので、私は『うん』とだけ答えて、そそくさと総務課を後にする。
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