彼が嘘をついた
この半年。
俺は彼女と、真剣に恋愛してきたつもりだけど、彼女にそれを受け入れてもらえるのだろうか…



「五十嵐さん。
立ったままもなんなので、一旦、座りましょう」
佐久間社長の言葉に、全員がイスに座る。

すると店員が、お茶を配ってくれる。
そのお茶を飲みながら、父が遥を見て話し出す。

「いやぁ。
話には聞いていたが、本当に綺麗なお嬢さんだ。
隼人には、もったいないくらいだ」

「本当ねぇ。
すぐにでも、お嫁さんに来ていただきたいわ」

母も賛同する。

遥が顔をしかめたのが見え、俺は立ち上がると、みんなに向かってこう言った。

「すみません。こういう席を作っていただいて恐縮なのですが、遥さんと2人で話をさせてもらえないでしょうか?
お願いします」

佐久間社長·お兄さん·俺の両親は目配せし頷き合うと、代表して佐久間社長が話し出した。

「…分かった。
これからのことなど、2人で話すこともあるだろう。ここは、3時まで使用できる。好きなものを注文してもらっていい。会計は、私に来るようになっているから。
帰りは、遥をちゃんとマンションまで送ってやってくれ。
これはタクシー代だ」

佐久間社長は俺に1万円札を差し出した。
しかし、俺はそれを断った。

「…大丈夫です。
ちゃんと遥さんのことは送りますので」


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