彼が嘘をついた
愛娘·恵の名前を出すと、さすがの大石部長も何も言えないみたいだ。

部のみんなが、部長が美鈴先輩にやり込まれているのを見ている。
美鈴先輩の言葉に反論出来ない部長は、

「…会議に行ってくる」
と、苦しまぎれに言って出て行った。

その後ろ姿を見送って、
「遥。
私たちも、最初のお茶出しの準備をしよう」
美鈴先輩が立ち上がった。

「はい！」
私も立ち上がる。

「坂本さん、佐久間さん。
今は特に急ぐ仕事はないから、役員の皆さんに美味しいお茶を煎れて差し上げて」

庶務課の永瀬課長が声をかけてくれた。
大石部長に睨まれ、恵の扱いにいつも困っている 人である。

「了解いたしました！
ついでに、総務部の皆さんにも、美味しいコーヒーを煎れてきますね」

美鈴先輩はみんなにそう言って、給湯室に向かった。
私は美鈴先輩の後を追いかけた。





☆　★　☆　★　☆　★

私は、美鈴先輩と役員分のお茶を煎れながら、
「あの先輩。
…さきほど言いかけた、佐久間副工場長の噂って何ですか？」
気になったことを聞いてみた。

どこの会社にも、社内の噂に詳しい人っていると思う。
うちの会社では、美鈴先輩がその人に当たる。
庶務課と言う仕事と、先輩の社交的な性格によるものだと思うが。





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