オトナチック
訳がわからなくて戸惑っていたら、
「実は…俺のばあちゃんが癌で入院しているんだ」

杉下くんが言った。

私は黙って、彼の話に耳を傾けることにした。

「3年も前から癌に侵されていて、今はもう余命が幾許もない状態なんだ。

そのばあちゃんの夢が“孫のお嫁さんの顔を見ること”なんだ。

俺が本当に小さい頃からばあちゃんの世話になったから、せめてものばあちゃん孝行をしてあげたいんだ。

最期にお嫁さんの顔を見せて、安らかに眠って欲しいんだ。

だから、住むところを提供する代わりとして俺の婚約者のふりをして欲しい」

言い終わった後、杉下くんは頭を下げた。

私に頭を下げた彼はとても必死で、どうすればいいのかわからなくて戸惑ってしまった。
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