オトナチック
「俺は絶対に父親のところへ会いに行かない。

会いたいとも思わないね」

杉下くんは後ろの食器棚からお皿を2つ取り出した。

「できたから早く着替えてきなよ」

話を切りあげたいと言うように言った杉下くんに、
「会いに行ってあげてよ!」

私は言った。

「俺の身内はばあちゃんだけだ。

あいつは血が繋がっているだけの赤の他人だ」

杉下くんは言い返すと、シチューをお皿に盛りつけた。

「脳梗塞で倒れて植物状態になったって、ものすごい最期だね。

ある意味、それが当然の報いなんだろうけど」

もう1つのお皿にもシチューを盛りつけると、杉下くんはそれをテーブルのうえに置いた。

「この話はもう終わりだ。

冷めるから早く着替えてこい」

そう言って床のうえに腰を下ろした杉下くんに、私は背中を見せると自室の方へと足を向かわせた。
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