名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そうしなかったら、どうなるにしても、まったく正反対の顔をしてしまいそうだと思っていたから。


泣くのをこらえても、きっとわたしは上手くこられきれずに泣いてしまう。

でも、そんなわたしを見たら、そうちゃんは困るんじゃないかって。


泣いても、泣くのをこらえても、どちらにせよ、そうちゃんを困らせるに違いないと思っていたから。


とにかく笑おうってだけ決めていた。


ずっと、そればっかりを心配していた。


ただ、必死で口角を上げてはいるものの、自分が上手く笑えている自信はあんまりないけど。


「……そ、ちゃん」


ぬれた視界で前を向く。


かすれた声で呼びかけると、広い肩が大きく跳ねた。


「あのね、あの」


そうちゃんは、いろいろが混ざった表情で黙りこくっている。


もっとちゃんと顔が見たくて、目を見て返事をしたくて、そうちゃん、ともう一度呼んだ。


「そうちゃん」


どう言おう、どう返そう、なんて今まで練ってきた考えは、頭が真っ白で思い出せない。


でも、答えははっきりしている。


たった二文字を言うのに、わたしは想像よりずっとずっと多くの勇気を掻き集めた。
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