オフィス・ラブ #Friends

「面白い人ってこと」

「じゃ、試してみなよ」



来た。

愉快そうにあたしを見る顔を、見返す。

小さなテーブルで、お互いがほおづえをつくと、ひじ同士がぶつかりそうになる。

間近に見る顔は、やっぱり綺麗だ。



「何をですか」



どう出るかな、と思って、あえてしらばっくれてみると。

至近距離で、いたずらっぽい視線を感じる。





「末っ子」





にやっと笑うその性格は、けっこう好きかもしれないと思った。





うち、来ます?


バーを出たところで、そう提案すると、さすがにびっくりしたみたいだった。

家を訊いたら、偶然にもあたしの住んでる隣の隣の駅で。

それなら万が一泊まることになっても、お互い明日の仕事に支障がないだろうと思って、誘ってみた。



「…どこまで許してくれるつもり?」

「お好きなように」



駅に向かいながら並んで歩く。

この人は、距離の取りかたがうまい。


気軽に頭や肩を叩いたりするわりに、意味深にさわってきたりは絶対しない。

今も、あたしに近いほうの手は、ポケットに入れっぱなし。

今日の押せ押せぶりを見てる限りでは、紳士というわけでもなさそうだから、単にカンがいいんだろう。


彼は、歩きながら、何か考えているふうだった。

自分で試してみろって言ったくせに、今さら何を迷ってるんだろうか。

まあ、これで軽いと思われるなら、それでもいい。

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