雪見月
考える俺と、呼吸を整える彼女と、二人。


荒い息遣いに混じって、気まずい間が空く。


「(話題ねぇなー)」


黙ってみたり。


「…は、」


無理矢理押し込めた呼吸音がしたり。


その間ずっと、沈黙は堂々と俺たちの間に居座った。


「…………」

「(落ち着いた……)」


どうにもできずに様子をうかがっていると、呼吸音が規則正しく静かなものになった。


落ち着いた、かな。


結局最後まで黙ったままだったが、でもまあ、それで彼女の呼吸が整ったのだから良しとしよう。


余計なことは言わないに限る。


「行きましょうか」


何かを言う代わりに俺は、掛け声と共に差し出された白い手に黙って自分の手を重ねた。
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