となりの専務さん
「え?」

「アンタ社会人だって大家が言ってた気がするけど、大卒?」

「あ、はい。今年二十三です」

「じゃあ俺二個下だし、なおさらタメ口でいい。むしろタメ口で話せ」

年上扱いしてくれてる割には命令口調だけど……でも、そう言ってくれるのはもちろんうれしかった。より距離が縮まった気がした。


「……じゃあ、タメ口で」

「ん」

「……木崎くん、でいいですか? あ、じゃない、いい?」

「凛(りん)でいい。木崎 凛太朗(りんたろう)だから。みんなそう呼ぶし」

「……凛くん」

「……アンタは?」

「え?」

「名前。石山さんだっけ?」

「いえ、石川です」

「下の名前は」

「広香です」

「広香な」

そう言うと木崎さん……凛くんは、頬をポリ、と掻く仕草を見せた。



「じゃあ、私そろそろ部屋に戻るね」

私がそう言うと、凛くんも「おう」と答えたけど。



「あ」

「なに?」

「その……」

凛くんはなにか言いづらそうにしながら、ゆっくりと自分のジーパンの後ろポケットに入っていた携帯を取り出した。そして。


「……LINE、教えて」

「え?」

「そ、その、同じアパートだし、そういうの知ってた方が都合いいこともあるかもしれないだろ」

「ああ、そうだね。凛くんが今日みたいに掃除サボった時とかね」

「うっせ。いいから教えろ」

そんな会話をしながら、私は凛くんとLINEのIDを交換した。凛くんのLINEのアイコンは、さっき弾いてもらった彼の相棒のベースの画像だった。
< 112 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop