となりの専務さん
「そ、そういえばさっき木崎さんに会いました」

私はまたウソの笑顔で、強引に話題を変えた。なんだかもう辛かったから……。


「あ、そうなの? 木崎さんのお父さん、大丈夫だったって?」

「あ……はい」

お父さんの入院は彼のウソでした、っていうことは専務にはわざわざ言わなくていいよね。凛くんももうあんなウソは言わないと思うし。



「木崎くんって、ハデな髪の色した大学生だよね? どんな子だった?
去年の掃除の時はいたけど、全然会話なかったし、普段もほぼ会わないから、いまだに話したことほとんどないんだよね。
ちょっと無愛想な子だっていうイメージしか思い浮かばなくて」

無表情の専務と、無愛想な凛くん……確かにふたりが会話してるところは、あまり想像できないかも。


「私もそういうイメージがあったんですが、話してみたら普通にいい子でしたよ」

「そうなんだ」

「明るいし、実は結構笑う子でしたし、話してて楽しかったですし」

「ふーん……?」

「あ、バンドやってるんですって。ベースを少し弾いてもらったんですが、とても上手でした! すごいですよね」

「……」

「……専務?」

あれ? なんか急に専務の顔が急に無表情になったような……?
いや、専務はもともと無表情なんだけど、今話してた時はもう少しやさしい雰囲気もあったんだけど……今はなんだか、少し……怒ってる、みたいな……?


「専務……? どうかしましたか?」

「仲よくなったんだね」

「え?」

「木崎くんと」

専務の質問に、私は「は、はい……」と返した。
すると、専務はもっとわかりやすく怒ってるような表情になった……。
急に眉間にしわを寄せて、「そうなんだ」って答える声のトーンも少し低くて。
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