となりの専務さん
次の日。

専務は朝から出かけていった。
日曜日だけど会社に行かないといけないらしい。
そのことを、朝、専務はカーテン越しに私に話してくれた。……たとえカーテン越しで、顔が見られなくても、出かける前にそう声をかけてくれたことは、うれしかった。

……でも、まだ若干冷たい感じの声だった。まだ、怒ってるみたいだった。



私は今日は予定がなくて、とりあえず午前中は部屋の掃除をしたり、日用品を買いに行ったりして過ごした。



お昼ご飯を食べ終わった頃、LINEが届いた。凛くんからだった。



『ちょっと話したいことあるんだけど、そっちの部屋行っていい?』


……そっちの部屋って、この部屋?


……この部屋に来る⁉︎

いやいや、掃除はしてあるけどそういう問題じゃなくて!
こんなポッカリと壁に穴が開いてる部屋に人なんて絶対に呼べない‼︎



『ごめんなさい。部屋の掃除中なので、そちらの部屋の前まで行きます』


私はそうウソをついて、部屋から出て、階段を下りて一階の凛くんの部屋の前まで向かった。



凛くんの部屋の玄関の戸をコンコンとノックすると、すぐに凛くんが出てきてくれた。


「おう。まあ上がれよ」

「えっ?」

あ……どうしよう。
さっき凛くんから『部屋行っていい?』って言われた時は、壁の穴がバレるわけにはいかない! っていうことに意識が集中しちゃってそれ以上のことは考えられなかったけど……同じアパートとはいえ、ひとり暮らしの男の子の部屋に上がるのって、マズいかな?
いや、専務の部屋にもすでに上がったんだけど……あの時は流されるままにというのもあり……。
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