となりの専務さん
凛くんはそれに気づいていないのか、あえてムシしてるのかわからないけど、動じる様子はない。


でも。


「……てか、誰、その男」

と、大樹くんをなぜかギロッと睨みながら言った。


「え、えと、彼は……」

「彼? まさか、彼氏か⁉︎」

「ちちち違うよー‼︎ そうじゃなくて……!」

すると大樹くんが私のとなりで、


「広香の会社の同期です。よろしく〜」

と、にこっと笑ってそう答えた。


「……よろしく」

凛くんも、大樹くんを睨むのはやめて、大樹くんが無邪気に差し出した手に自分の手を重ねて、握手した。

なぜかわからないけど一瞬ピリッとした空気は、大樹くんのおかげで和らいだ気がした。
大樹くんのコミュニケーション能力の高さは大学時代から気づいてたけど、それに救われたかな。



「……まぁいいや。広香、楽しんでってくれよ。あ、最前列のここ、ふたり分空けておいたから」

凛くんは私にそう言うと、再びほかのメンバーの人たちの元へと戻っていった。


「いやー、凛くん? っていい人だなー」

……正直、普通だったらそんなこと言える雰囲気じゃないと思ったけど、大樹くんが天然でよかった〜。



……それから数分後。


凛くんたちのバンドのライブが始まった。


(うまい……)

音楽について詳しくわかるわけじゃない。
でも、そんな私にも一瞬で理解できた。
ギターも、キーボードも、ドラムも、素人のレベルじゃない。たぶんプロ級じゃない……?
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