となりの専務さん
時刻は、まだ八時少し前。
アパートの外から二階を見上げると、専務の部屋の電気は点いていなかったので、まだ帰ってないんだなと思った。

夕飯は、昨日の残りでいいか。
簡単に用意をして、ご飯を食べ終わった頃。


コンコン。

誰かが私の部屋の玄関の戸をノックした。

誰だろ? 専務? あっ、専務の分も夕ご飯まだ少しなら残ってる!

そう思って玄関を開けると。


「あっ、凛くん」

そこにいたのは凛くんだった。


「気のせい? なんか今、俺の顔見てガッカリしたような顔しなかった?」

「え⁉︎ してないしてない‼︎ それより、今日はお疲れ様! 帰ってくるの早いね⁉︎」

私が慌ててそう言うと、凛くんは。


「今日夜にバイトあるからよ。今日は打ち上げもできなくて」

「バイト⁉︎ これから⁉︎ なんの⁉︎」

「居酒屋だよフツーの」

「大変じゃない?」

「でもバイトしねーと金がねーからな」


……そういえば、凛くんはなんでこのアパートに住んでるんだろう?

古くて、お世辞にも住み心地がいいとは言えないこのアパート。

たぶん、住んでる人はみんなワケありだ。
私は家に借金があるからだし、中野さんは留学費用を貯めるための節約、専務は……まぁあれだけど。

昨日会ったばかりだから当然だけど、凛くんのことはまだまだ知らない。


……すると。


「……あのさ、ちょっと話さねぇ?」

「え?」

「部屋まで入らねぇから。ここで話そ」

そう言って凛くんは、私の部屋の前の柵に寄りかかりながら言った。


「う、うん」

私も、サンダルで外に出て、玄関の戸を閉めた。
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