となりの専務さん
「……今日、どうだった?」

体の向きを外側に変えて、凛くんは夜空を見上げながら言った。
今日は星が見えた。


「……すごく、すごかったよ」

「ははっ、なんだそれ。ボキャブラリー少ねぇのか?」

「うっ。ごめん……でも、ほんとにすごくて」

「……ありがと」

凛くんは私の顔を一瞬だけ見て、笑った。
ちょっと生意気なところもあるけど、笑うとかわいいなって思う。


「……あのさ」

「うん」

「お前はなんでこのアパートに住んでんの?」

私がさっきまで考えてたことと同じことを言われ、驚いた。


「私も、同じこと考えてたよ」

「マジで? じゃあ教えて」

「……ごめん」

家の借金のことは……やっぱ言いたくはない……。


すると凛くんは。


「嫌だ」

「え?」

「俺は、知りたい。広香のこと、全部知りたい」

知って、悩んでることがあるなら力になりたい。凛くんは私の顔を真剣に見つめながら、そう言ってくれた。


……力に、なってくれる。

その言葉が、とても素直にうれしかった。

……本当の本当は、誰かが話を聞いてくれるなら、打ち明けたい気持ちも少しはあった。
友だちに心配はかけたくないし、万が一同情されたら……なんて思ったら誰にも言えなかったけど。


凛くんなら、受け取ってくれるなって素直に思った。
同じワケありアパートに、きっと同じすワケありで暮らしてる彼にだからこそそう思ったのかもしれないけど。
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