となりの専務さん
でも、仕事が終わると気が抜けてしまい、また寝不足によるフラつきが再発した。

早く……帰ろう……。帰って夕ご飯の支度して、それで……、


ーー今日は早く寝てしまおう。


そう思いながらオフィスを出ようとすると。


「広香ーっ」

後ろから、よく知ってる大樹くんの声が。
振り返ると、やっぱり大樹くんが、手を振りながらオフィスを駆け足で出てくる。


「はあ、よかった、追いついて」

「大樹くんももう仕事終わったの?」

「うん。まあ、俺いつも仕事終わらせるの早いけどね」

「そうだね」

「じゃ、帰ろうぜ」

「え?」

「いっしょに」

そう言って、大樹くんはスタスタと駅に向かって歩き始める。


……? どうしたんだろう。確かに、いっしょに帰るのが嫌なわけじゃないし、友だちなんだから不自然でもないけど。
でも、今までわざわざ追いかけてきてくれてまでいっしょに帰ったことはなかったのに。

とりあえず、私は慌てて大樹くんの後ろを追いかける。


すると大樹くんは、私の数歩先で顔だけ振り返って。


「俺さぁ、さっき専務に話しかけられちゃったよ」

「え!⁉︎」

私は思わず大樹くんの胸ぐらをつかんでまった。

「なにっ、ななななななにを話したの、専務からなにか変なこと聞いた⁉︎ ねえ‼︎」

「ぐ、ぐえっ」

「あ、ごめんっ」

私はパッと手を離した。

大樹くんはケホ、とむせながら、続きを話してくれた。
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